帰国の日が近づき、現地でPCR検査を受けることに。
ナビに従い、目的地に着くとそこは病院やクリニックではなく、検査場だった。
貸店舗然とした場所で、例えばテイクアウト専門のピザ屋でも入っていそうな小さな店構えならぬ検査場構えで、受付は折り畳み式のテーブルといった簡素な作りにある。
ドアを開け、Helloと挨拶をし名を名乗ると、受付人からしばらく待つように言われた。
部屋を見渡すと、パーテーションやカーテンで区切られたところはなく、数脚の椅子があるだけだ。
「受付人の前でどんな顔をして鼻に綿棒を突っ込めばいいんだ?」と、始める前から恥ずかしくなった。
すると「Youは今日、車で来たかい?」と思いもしないことを聞かれた。
戸惑いながら「Yes」とだけ答えると、「じゃあ、車の中で検査をしてきて」と検査キットを渡された ―― そうか、そういうことか。
そこは電車が通っている町ではないし、ほとんどの人が車で来るはずで、なるほどパーテーションなど必要がないわけだ。
車内で鼻に綿棒を差し込んでいるところを通行人に見られるのも、それはそれで恥ずかしいけれど。

鼻にグリグリと綿棒をこすりつけ、ケースにしまい、封を閉じて受付に戻ると「検査結果は一時間以内にメールで」と告げられ、その場をあとにした。
買い物を済ませてホテルに戻り、スマートフォンを目をやるとメール受信の通知が。
恐る恐るメールを開いてみると、検査結果は陰性、と。
う、嬉しい、ニッポンに帰れる。