過日、法要があり鎌倉へ。
行楽日和だったうえ、バイデン大統領の来日よる交通規制があるとかで、鎌倉周辺のみならず、鎌倉までの道のりも混むような気がして、自宅から現地までどのくらい時間がかかるか見当がつかなかった。
自宅から鎌倉までのルートを検索してみると「到着まで一時間から二時間」と、返ってきた。通常はそのように幅を持たせた時間予測にはならず、ナビにしても判断に迷うところらしい。
二時間以上かかることもないとはいえず、集合時間の二時間半前に自宅を出ると、国道も県道も渋滞など皆無、鎌倉周辺も空いていて、一時間とかからずに現地に到着してしまった。用心が過ぎたか。一時間半もの早着とあって、待ち合わせの場所には誰もいなかった。
こうなるとその場で待つ、などという選択肢はない。ここは鎌倉である。車の窓から街を眺めるだけでも好い、と再び車を走らせた。
子供の頃、鎌倉に暮らし、鎌倉が大好きだった祖父母に鶴岡八幡宮や寺院巡りに度々連れてきてもらったことを覚えている。当時は鎌倉の魅力がわからず「また歩くの? もう歩きたくないよ」などと駄々をこねてばかりだった。
それが三十歳を過ぎた頃だったか鎌倉に行ってみると、どこかで聞いたような言い回しになるけれど、昔ながらの街並みとゆったりとした雰囲気に「いいかも」などと思い直すのだった。

鶴岡八幡宮から段葛を横目に走ってしばらくすると、もとまちユニオンが見えてきた。ここで祖父母にチューイングガムやアイスクリームを買ってもらった夏の日が懐かしい。
由比ヶ浜海岸に着いたあたりで、道が混み始めないかと心配になり、つかの間の鎌倉観光を切り上げて、霊園へと向かった。
この日は亡き祖母の十三回忌だった。
僕もようやく鎌倉の良さがわかるようになりました ―― 額の中で微笑む祖母に手を合わせて静かに唱えた。