頭が大きい。どれほど大きいのか、言葉よりも数字の方が伝わりやすいだろうから、ここでメジャーを取り出して、頭に巻きつけてみる ―― 61cm だ。 加齢に伴う頭囲縮小はまだ先のことか。
日本の成人男性の平均的な頭囲はどの位かと調べてみると、どうやら57cmらしい。ちなみに女性は54cm なのだとか。
60cmを “大台” としても良さそうで、大台超えのこの頭はやはり大きい。

実際の頭位よりも小さく見える頭もあれば、大きく見える頭もあるはずで、僕の場合は後者だ。横幅のあるこの頭は小さく見えようがないのだった。
大きな頭は生まれながらのものとしても、その横幅を形作ったのは僕本人である。
母から聞いた話によれば、生後三か月までは仰向けで寝かせ、首が座ってきた頃にうつ伏せで寝かせてみようとしたところ、泣いて嫌がったらしい。
いくら試そうとも嫌がったようで、その訳はおそらく肋骨にある。うつ伏せになると、生まれつき左右ともに出っ張った肋骨が押されてしまい、痛いと書けば大げさだけれど、圧迫感があるのだ。
それはこの歳になっても変わらず、今以ってうつ伏せで寝ることができずにいる。
よく寝る子だったこともあって、「このまま仰向けで寝かせてばかりいては、後頭部が潰れてしまうかもしれない」と心配した母は、身体を横に向けたり、顔を横に向けたままにするなど、何度となく矯正しようとしたものの、赤ちゃんの僕は遊んでもらっているとでも思ったのか、ニコニコと笑いながら定位置の仰向けに戻ってしまうのだという。
こうして後頭部は潰れ、俗に言う絶壁頭になってしまい、側頭部には重さがかかることがないまま、幅のある頭骨ができあがっていった。
ちなみに二つ上の兄は、うつぶせ寝が好きな子だったそうで、顔は面長で後頭部は潰れてなどいない。数年前に測った頭位は56cmとのこと。
被験者わずか二名で何がわかるはずはなく、「仰向け寝が幅のある頭を形作る」と結論づけしてしまうのは、短絡的に過ぎるだろうけど、同じお腹から生まれ育ったことを考えると、もしかしたらもしかするかもしれない。
幼少の頃に、祖母と母から「あなたの大きなおつむには脳みそがいっぱい詰まっているのよ。お勉強ができるようになるわ」と言われていたことをよく覚えている。
励ましであり、慰めにも聞こえるその言葉の実は、二人の願いではなかったか。
つづく