オフィスでパソコンに向かっていると、一通のメールを受信した。
そのメールは秘書課で働く女性から、マネージメントメンバーをはじめ、インターンのお兄さんやお姉さんまで社の関係者全員に宛てられたものだった。
多少の誤訳もあるかもしれないけど、和訳してみたい。
件名には、冷蔵庫のエチケット とあった。
日本ではゴールデンウィークなどの長い休みの前になると、冷蔵庫の中に保管しているものは、各自で確認や処分をお願いよ、といった旨のメールが送られてくることはあって、ただアメリカにはクリスマスのほかには長期休暇はないから、今の時期にその種のメールが届くことはない。
本文にはこうあった。
カフェテリアにある冷蔵後の中にあった、あなたのものではない食べものが食べられていました。
他人のものを食べたり、飲んだりしないでください。
私はあなたのためにそれを入れておいたのではありません。
可笑しい。ものすごく可笑しい。しかし、これは笑い事でないのだと、行間をそう読んだ。
ここは会社ではなかったか。どうして僚友のチーズだかパンだかを食べちゃったのか。自由の国にしても、あまりに自由が過ぎるだろう。
ハングリーボーイの仕業、いや、ハングリーガールの線もあるけども、誰にしてもこのままだんまりを決め込むのではなく、正直に自白すべきだ。
お詫びに行く際は手ぶらはよくなくて、腹にしまったものと同じものを用意し、さらには山盛りのドーナツ、あるいはコーヒーにケーキ、おまけにクッキーも添えて。
さあ、急いで。ダンキンドーナツもスターバックスもすぐそこに。