遠い過去と未来

 

スーパーマーケットなどで食料品を買う際に賞味期限を確認することはほとんどない。
この日も「これ、これ」と何も考えずにホワイトクリームとトマトベースのパスタソースをそれぞれ一つずつ買い物カゴに入れた。

それから数日して、今夜はパスタを食べよう、とホワイトクリームのパスタソースを棚から取り出して、開けようとして掴んだ蓋の中央に “2004” の印字を見た。
2から始まる四桁の数列といえば、西暦を連想する人は少なからずいると信じたい。

2004年 ―― 14年前のことである。あの頃、僕はまだ若かったなどと半生を振り返っている場合ではない。
瓶に詰められたものとはいえ、さすがに14年も前に作られた食品はアウトではないか。

こうなると、トマトベースのパスタソースの賞味期限も気になる。
棚から取り出して確認してみると、そにには “2105” とあった。87年後 ―― 新種の宇宙食かもしれない。NASAのロゴは見当たらないけれど。

遠い過去と未来の賞味期限に印字ミスを疑った。あってはならないこととはいえ、ヒューマンエラーもメカニカルエラーも、ある時はある。
つい先日も、賞味期限が印字される白帯のスペースが空白になったままの食パンを見かけたばかりだ。

怖いもの見たさに、とりあえず蓋を開けることにした。強い異臭を覚悟して。
ところが、なんのことはない、よくあるホワイトクリームの匂いが鼻を通った。
見た目もグロテスクなものを想像していたけれど、まったくもって。

とはいえ、そのまま食べてしまう気にはならず、瓶に蓋をして改めて蓋に目をした瞬間、「ああ!」と思わず声を上げた。
あろうことか 2004 の下に NOV 0619 と印字されているのだ。 ようするに11月6日2019年のことである。
もう一方には DEC1819 とあり、12月18日2019年以外のものとは考えられない。

見ないようにする方がよほど難しい行間にあるこの賞味期限になぜ目がいかなかったのか ―― 年齢によるものなのだとしたら、これだから年はとりたくない。

2004と2105の意味するところなどどうでもいい。
じっくりものを見ず、考えもせず独りで盛り上がった自分がただただ恥ずかしい。
自分への見せしめとして、ここに書き残しておく。

 

C014

 

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