続・ミドオハイオにて

 

コントロールタワーからコースオープンの合図が出ると、飛び乗るようにコクピットに乗り込む。

シフトレバーを1stギアに入れ、クラッチをつないで走り出す。
エンジンは鋭く吹け上がり、ブレーキのダイレクトなタッチもいい。しっかりとセットアップされたマシンは快調そのものだ。

ウオームアップを終えて、ペースを上げていくと、やはりタイヤが滑る。また滑る。
冷えた路面では、タイヤになかなか熱が入らず、本来の性能を発揮できない。

しかし、こうした悪条件下で走らせられることの方が稀なのであり、経験はやがて糧となる。

マシンにも慣れてきた頃に、雲の切れ間に光りを見た。
「これはドライになるかな」―― 一日の中でウエット路面とドライ路面の両方を走れるのなら、願ってもないことだ。

太陽が顔を出すと気温はぐんぐんと上昇し、路面はフルドライに。
さっきまでガレージに篭っていたIMSAレースに出場する二台のレーシングカーも走り始めるのか、メカニックが慌しく走行の準備にとりかかっている。

走行を再開する。タイヤがしっかりと路面を捉えていることがステアリングを通じて伝わってくる。
ドライ路面ではタイヤの限界点が深くなり、アクセルを開けるタイミングは早く、ブレーキを踏むタイミングは遅くなって、景色の流れる速さが変わった。

「あと少しアクセルを早く開けていればラップタイムを0.1秒は削ることができた」
「タイヤのグリップにまだ余裕があったからブレーキをあと3mは遅らせることができた」

ドライビングには後悔が付いて回る、と書けば後ろ向きにに受け取られてしまうかもしれない。だけど、そうではない。
その裏側には、スピードへの欲求が隠れている ―― もっと上手くなれる、もっと速く走れる。

気が付けば陽が落ちはじめていた。コースクローズの合図に振られたフラッグに寂しさを。
いつだって楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
走り足らない、まだまだ全然だ。

 

C016

 

1件のフィードバック

  1. 乗った車が気になりますが、仕事上書けないのかな? 想像がふくらみます。市販車改造クラス?

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