数年ぶりのサーキット走行となるその場所は、オハイオ州にあるミドオハイオスポーツカーコースだ。
アメリカのサーキットを走るのは初めてのこと。
僕は近代的なサーキットよりも、木々に囲まれ、コースと観客席の間隔が狭い昔ながらのサーキットが好きだ。
子供の頃にテレビや雑誌で見た海外のサーキットは、どこもそのような場所ばかりだったから、イメージ像が出来上がっているのだ。
ミドオハイオは典型的なオールドスタイルのサーキットである。
あたりには緑が生い茂り、コース幅とランオフエリアは狭く、施設内に置かれた木製のベンチや看板は70’Sのそれだ。
この日に備えて、食事制限とフィジカルトレーニングをこなしてきたから、体調はすこぶる良い。
忘れ物の確認もこういう時だけは念には念を。財布と携帯電話は忘れても、ヘルメットとグローブ、それとレーシングシューズも忘れてはならない。
などと張り切って、ホテルで迎えた当日の朝、カーテンを開けてみるとそこには雪景色が広がっていた ―― オーマイガッ!
この大事な日に何の仕打ちだろうか。
今年は走ろうとする日に雪に見舞われること数回。結構な確率だ。
雨を呼ぶ女性を雨女だとかいうけれど、雪を呼ぶらしい男を雪男とはいうまい。
雨はいい、でも雪は困る。まず間違いなくサーキット側が走行を許可してくれないからだ。
急いでアテンダントに連絡をとる。
「Snowingなのだけれど・・・」
「大丈夫だ、予報では雪はもうじき止むらしいから、とにかくサーキットに行こう」
降り続いた雪も、サーキットに到着してまもなくするとたしかに止んだ。
アスファルトの上の雪は溶けて、ウェット路面に。このコンディションであれば、走行は許可されるはずだ。
ランオフエリアにはまだ雪が残っていて、コースアウトをしようものなら滑走して、コントロールを失うことになる。
まずはタイヤのグリップ力を探りながら走ろう。
明日につづく