出張先に向かう途中で思わぬ渋滞に遭い、日本人の同僚と二人でぶーぶー言いながら、クルマを走らせた。
大幅なタイムロスを喫したものの、なんとか時間に間に合うであろうことがわかると、立腹は次第に空腹へと変わった。
ゆっくりしている時間はないからと、アルファベットのMの文字でおなじみのファーストフード店に駆け込んだ。
どうぞ、どうぞと同僚を先にカウンターへと促して、後ろに並び、前方の壁に目をやると異変に気付く。
メニューボードに商品の写真がない ―― 商品名が文字で、値段とカロリーが数字で表示された簡素なものだった。
カウンターにもメニューの用意はなく、付け加えるなら店員のスマイルもなく、何もかもが日本のサービスとは異なる。
こうなると想像でオーダーをするほかない。
同僚は「ダブルチーズバーガー」をオーダーした。この種のチーズをあまり好まない僕は食べたことはないけれど、耳にしたこのある名前だ。
きっと同僚は日本を懐かしんでオーダーしたに違いない。
待つこと二分ほどだったと思う。
スマイルなき店員が同僚に差し出したのは、二つのハンバーガーだった。
同僚は首を傾げた。オーダーしたのはダブルチーズバーガーひとつである。
それはもちろんサービスなどではなかった。
二つのハンバーガーには、それぞれCheeseburgerの文字が。
ダブルチーズバーガー、それは「チーズバーガーをダブルで」とのオーダーにあたり、ダブルチーズバーガーという名のハンバーガーはメニューになかったのだ。
笑った。二人して大いに笑う僕らに、店員は怪訝な顔を。
この面白さはちょっとわかるまい。