アメリカ人の同僚二人と出張先に向かう車内でのこと。
片道六時間は長く、はじめは適当な話でもしながら、なんとかやり過ごしていたものの、出発から二時間も経たぬ内にいよいよ話すことがなくなった。
英語がもっと話せれば、会話が広がるのだろうけど未だそのレベルにはない。
沈黙がつづいて、頭の中で話題を探した。
少ないボキャブラリーで難しい話はできるはずもないけれど、こういう場面は軽い話題に限る。
あった、あった。この下なく軽いのが。
「日本でアメリカの映画が公開される時に『全米が泣いた』というキャッチコピーがよく使われるんだけど、これって、どうなんだろ?」
「あはは。全米が泣くような映画って、あったか?」
「あはは。ない」
「日本人はそういうキャッチコピーの映画を観て泣くの?」
「多分、泣いていないと思う」
「じゃ、こうだ。『みんな泣かない』」
「あはは」
「キャッチコピーは映画それぞれにあるべきじゃないかな」
ううむ、たしかに。この上なくまっとうな結論をありがとう。
映画話は思いがけず膨らんだ。今度は彼らが問いかけてきた。
「モータースポーツの映画で何が好き?」
「『ラッシュ』も悪くないけど、僕は『デイズオブサンダー』が好きだね。古い映画だけど、知ってる? それと二輪だと『世界最速のインディアン』がいいな」
「もちろん知ってるよ! 君とまったく一緒だよ!」
「うん、僕も『デイズオブサンダー』がベストだと思う」
満場一致である。
彼ら二人と僕は一回り以上も年が離れているけれど、僕ら三人はモータースポーツ経験者であり、趣味趣向がやはり同じらしい。そういえば、現職も。
今度の週末は久しぶりに『デイズオブサンダー』を観てみようか。
映画のチョイスにびっくり。いや嫌いじゃないが、他の作品もあるのに意外。自分にとっても身近な作品だけに意外。満場一致にこれまた意外!
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YASHさん コメントありがとうございます。どのカテゴリーであれ、ドライバーとしてモータースポーツに関わった経験のある人は、「デイズオブサンダー」を好む傾向が強いように思いますね。
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なるほど。レースは危険と隣り合わせ、死と隣り合わせ。事故の恐怖を乗り越える物語がレーサーの共感を誘うのかもね。
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YASHさん あまり一般には受け入れられなかった映画のようですが、そのわかりやすい展開はスピードボーイズに支持されているようです(笑)。
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